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賃借人である法人からマイナンバー提供の依頼がありましたが、提供するにあたっての留意点を教えてください。
父親が亡くなり、賃貸アパートを相続したところ、賃借人である法人から委託されたという業者から税務署へ提出する書類(不動産の使用料等の支払調書)に賃貸人である私のマイナンバーを記載するため、としてマイナンバーの提供の依頼がありました。提供するにあたっての留意点を教えてください。
また、マイナンバーは重要な個人情報であり、できれば今後このようなことは回避したいと考えますが、よい方法があれば、併せて教えてください。なお、当該賃借人から受け取った年間の賃料は120万円です。
ご相談のような場合には、その業者が本当に委託された業者であるかの真偽を確かめる他、提供するマイナンバーの利用範囲や安全管理面がどうなっているかなどを確認されるとよいでしょう。また、回避方法については、詳細解説をご参照ください。
不動産に関しては、一定の場合、税務署へ法定調書を提出する義務があります。
たとえば、@不動産の使用料等の支払調書、A不動産等の譲受けの対価の支払調書、がこれに該当します。
- @不動産の使用料等の支払調書
法人又は不動産業者である一定の個人は、不動産の使用料等として同一人に支払う金額が年間15万円を超える場合には、「不動産の使用料等の支払調書」を作成し、税務署へ提出しなければなりません。 - A不動産等の譲受けの対価の支払調書
法人又は不動産業者である一定の個人は、不動産の売買等の対価として同一人に支払う金額が年間100万円を超える場合には、「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を作成し、税務署へ提出しなければなりません。
これらの書類には、取引の相手方(@であれば賃貸人、Aであれば売主)のマイナンバーを記載する必要があるため、上記取引に該当した場合には、賃貸人又は売主はマイナンバーの提供が求められます。
なお、マイナンバーの提供については本人確認を行う必要があり、マイナンバーだけでなく、マイナンバーカードの場合は表裏両面の写し、通知カードの場合は、通知カードと身元確認書類(運転免許証など)の写しの提供依頼もあります。
ご相談のような賃借人が委託した外部の業者からマイナンバー提供の依頼がある場合の注意点は、状況に応じて真偽を確認する必要があることです。マイナンバーの収集を外部の業者に委託することは法令で認められていますが、本当にそれが委託された業者なのかは、賃借人に直接確認されるとよいでしょう。
マイナンバーの提供を受けた側(ご相談の場合は賃借人である法人)は、
- 法令やガイドラインにより、収集したマイナンバーの安全管理措置を講ずることが義務付けられている
- マイナンバーは法令で定められた目的以外での取得・利用・他人への提供が禁じられており、違反した場合には厳しい罰則が設けられている
- 提供を受けたマイナンバーを利用して行政機関などが保有する個人の情報を取得することはできない
など縛りが多く、安全管理措置を遵守するため、マイナンバーの収集を外部の業者に委託している法人等は少なくありません。
ご相談の不動産賃貸についてマイナンバーの提供を回避する方法としては、たとえば資産管理会社など賃貸人が経営する会社がある場合は、転貸借を利用する方法が考えられます。具体的には、当該会社を介して賃貸することにより、最終の賃借人からのマイナンバー提供の依頼を回避することができます。
「不動産の使用料等の支払調書」では、法人に支払う不動産の使用料等については、賃借料を除く権利金、更新料等が対象となるため、賃借人から資産管理会社へのマイナンバーの提供依頼はありません。転貸借を利用したとしても資産管理会社とご相談者との間でのマイナンバーのやりとりは必要となりますが、第三者へのマイナンバーの提供は防ぐことができます。
他方、マイナンバーの提供を求めてくる法人又は不動産業者である一定の個人以外を賃借人とするなどの制限はお勧めできませんし、賃料設定もご相談のケースでは調整が難しいでしょう。
マイナンバー提供の依頼に応じる法令上の義務はなく、罰則もないこともあり、マイナンバーの提供に躊躇される方も多いと聞きます。マイナンバーを提供される際には、提供する相手をよく確かめてから行いましょう。
[参考]
国税庁HP「国税の番号制度に関する情報」
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